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人身傷害保険の落とし穴
人身傷害保険が発売されて、何年か経ちました。(2020年10月現在)発売当初はそんな補償が可能なのと思いましたが、今では常識に近い浸透率です。
この保険は結論を先に言うと非常に優れている商品であり、自動車という危険な乗り物を運転する以上・また世の中に自動車が溢れていて多くの人が人身事故に巻き込まれている事実を考えると安心な生活を送る為に欠かせない補償です。
ただ加入の際にいい面ばかり強調されて、実際保険金を受け取る際に「聞いてないよ~」的な事にならないように、ちゃんと理解する事が重要である。まずは人身傷害保険の発売によって何が変わったのか確認し、その後問題点を考えて見ましょう。
人身傷害保険の加入率は2020年現在95%近くまでいっており、正しく理解しておくことが重要です。
人身傷害保険のメリット一覧
事故形態 |
人傷に加入済み |
人傷に加入なし |
過失割合の ある事故 | 差額分は自分の加入する保険会社から補償を受けられる。 |
自分の過失分は減額される。 50対50の事故で請求額が傷害で500万なら250万が賠償されます。 |
単独事故 | 加入する保険会社から治療費・休業損害・慰謝料等の補償を受けられる。 |
治療費などは自己負担。 自損事故保険から定額のお見舞金が下りるだけです。 |
当て逃げ | 加入する保険会社から治療費・休業損害・慰謝料等の補償を受けられる。 |
一旦自己負担です。 政府の運営する政府補償事業に後日請求可能ですが、時間がかかります。しかも過失分は減額されます。 |
歩行中 | 加入する保険会社から治療費・休業損害・慰謝料等の補償を受けられる。 |
自分の加入する保険会社から保険金は下りません。 自分の過失分は減額される。50対50の事故で請求額が傷害で500万なら250万が賠償されます。 |
他の車に 乗車中 | 加入する保険会社から治療費・休業損害・慰謝料等の補償を受けられる。 | 自分の加入する保険会社から保険金は下りません。 |
以上のとおり、人傷に加入するメリットは非常に大きいです。自分や家族を守るために必ず加入すべき特約だと思います。
保険会社にしてもいい商品で・かつ収入保険料もあがるので保険会社にとってもいい商品ですね。ただ過失減額分が補償されるという説明はすこし注意深く理解する必要があります。
正確に説明すると、人身傷害補償保険の算定基準に則って計算された補償額と既受領額の差額が補償されると理解するほうが正しいわけです。少々分かりにくいと思うので簡単な対比表をみながら解説していきます。
対人賠償会社と人身傷害社の違い
項目 | 金額 | 対人賠償 | 人身傷害 | |
治療費 | 300万円 | 認定 | 認定 | |
休業補償 | 200万円 | 認定 | 認定 | |
交通費・雑費 | 20万円 | 認定 | 認定 | |
慰謝料 | 180万円 | 認定 | 人傷基準で120万円 | |
その他 | 10万円 | 認定 | 認定 | |
損害認定額合計 | 710万円 | 650万円 | ||
過失相殺 | 20% | ▲142万円 | ▲0万円 | |
支払額 | 568万円 | 82万円(差額払い) |
とまあこんな感じになる訳です。人身傷害保険のイメージからすると142万円が自分の加入する特約から貰えそうですが、あくまで人傷基準で積算した金額との差が補償される訳です。慰謝料が話し合いの場でここまで差が出るのはなかなかないかもしれませんが、話し合いの場が裁判などの公的機関にうつり慰謝料の基準が変わった場合など可能性としては少なくありません。
人身傷害保険はあくまで事故にまきこまれた被害者が補償をちゃんと受けられる為に作られた保険であり、より多くの補償を得る事を目的としている訳では無いわけです。また治療費も公的保険の使用を推奨しており、業務中であれば労働災害保険・治療費は健康保険などの使用を基本的にはしなけれ
ばなりません。会社の車で営業中に追突され自分の自動車保険からも保険金がでると勘違いするケースも多いですが、多くの保険会社では対象外となります。使用者の業務に従事中は個人の自動車保険ほとんどの約款で対象外にしています。なかなか会社にいいずらいという気持ちもありますが、業務中は対象外です。
過去の発生した保険未払い問題の一つに人身傷害保険が適切に支払われていないと言う事がありました。人身傷害保険は最初保険請求があった際に加害者側の保険会社がいれば、そちらに御請求下さいという対応を保険会社は取りがちです。通常は対人賠償基準の方が人身傷害保険の基準より上ですので、人身傷害保険としては支払が発生しない訳です。損保社員の多くがそう理解し賠償額の検証をしていなかったのが未払い問題の原因です。保険会社ですら検証が十分ではありませんでした。
実際の事案をみると人身傷害基準の方が高くなるケースが多くあります。
①過失相殺で減額されたケース
②追突事故等100%の加害事故で相手が自賠責の基準で示談を進めた場合(通院頻度・期間によります)等があります。
この場合は要注意ですのでちゃんと保険会社に支払いがあるか確認しましょう。色々注意点を書きましたが、現状自動車保険の補償の中で、人身傷害保険が自分にとって一番役立つ保険と管理人は思います。